7月最終金曜、7月31日。月末のリバランス判定を行いました(評価額は前日・木曜30日の終値ベース)。
結論から書きます。今月はリバランスなし。ただし、内容は穏やかではありませんでした。5資産のうち目標の20%から最も離れていたのはSOXL(半導体3倍)で、乖離は-9.1%。比率にして10.9%まで痩せました。発動ラインの±10%まで、あと0.9%。
見覚えのある数字だと思った方は、このブログのかなり熱心な読者です。5月、SOXLが+9.4%まで膨らんで「発動まであと0.6%」で終わった月がありました。今回はその逆です。あのときは「買われすぎ」の方向で線に迫った。今月は「売られすぎ」の方向で、同じ線のすぐ手前まで来ました。
先月、SOXLが+14.1%まで膨らんでリバランスを発動した翌月に、今度はその主役が急落して反対側の線に迫る——ジェットコースターにもほどがあります。今月はこの急落の中身と、「発動した翌月に暴落が来た」ことの意味を記録しておきます。
7月31日の判定|SOXL-9.1%、あと0.9%で発動せず
まず、判定で見た比率です。左が先月のリバランス後(税金が引かれたあとの実績)、右が今月の判定時です。
2026/07/31 判定 / 戦略:5資産均等リバランス(±10%ルール)/ 結果:リバランスなし(最大乖離 -9.1%)
前月(2026/06/26・リバランス後=税引後)
今月(2026/07/31・判定時)
| 銘柄 | 前月比率※ | 今月比率 | 乖離 | 発動まで |
|---|---|---|---|---|
| WEBL | 22.5% | 27.1% | +7.1% | あと2.9% |
| TECL | 20.1% | 19.5% | -0.5% | あと9.5% |
| SOXL | 18.5% | 10.9% | -9.1% | あと0.9% |
| AGG | 21.6% | 23.4% | +3.4% | あと6.6% |
| USD(現金) | 17.3% | 19.1% | -0.9% | あと9.1% |
※前月比率は6月リバランス実施後・税引後の実績 / 金額非公開 / ルール:1銘柄でも±10%以上で全体リバランス(毎月最終金曜)
最大乖離はSOXLの-9.1%。±10%に届かなかったので、5銘柄すべて売買なし。今月は1株も売らず、1株も買いませんでした。
円グラフを見比べると、今月の主役交代が一目で分かります。先月のリバランスで18.5%に整えたSOXL(薄いオレンジ)が、1ヶ月で10.9%まで痩せました。SOXLという商品自体の値段は、この1ヶ月でほぼ半分になっています(3倍レバレッジなので、半導体指数の下落の3倍で沈みます)。かわりに膨らんだのがWEBL(インターネット3倍)で、22.5%→27.1%(円グラフでは濃い茶色)。AGG(債券・ティール)も23.4%へ相対的に存在感を増しました。
つまり今月のポートフォリオの中では、攻めの主役が半導体からインターネットへ交代し、守りの債券が静かに厚みを増した——そんな1ヶ月でした。
発動の翌月、主役が半分になった
ここで、先月の記事を読んでくださった方には、どうしても書いておきたいことがあります。
先月の私は、SOXLが34.1%まで膨らんだのを+14.1%の乖離で判定し、リバランスを発動して18.5%まで減らしました。その売買が約定した6月26日の金曜、たまたま半導体が急落し、私は「結果だけ見れば守りになった形です。でも、これは狙ったわけではありません」と書きました。
そして7月。半導体の下落は「あの金曜の急落」では終わりませんでした。月の後半にかけて本格的な暴落になり、SOXLの値段は1ヶ月でほぼ半分に。もし6月にリバランスをせず、SOXLを34.1%抱えたままこの暴落を受けていたら——ポートフォリオ全体の傷は、いまよりずっと深くなっていたはずです。6月の「守りになった形」は、7月に本物の「守り」になりました。
……と、ここまで書いて、正直に付け加えます。これは結果論です。
もし7月に半導体がさらに爆騰していたら、私はいま「34.1%のまま持っていれば」と唇を噛んでいたはずです。ルールは未来を予知したわけではありません。「膨らみすぎたものを機械的に戻した。その直後にたまたま暴落が来た」——それだけのことです。ただ、リバランスというルールが持つ「偏りを放置しない」という性質が、暴落の月には保険のように機能する。それを頭ではなく体で理解した、初めての月になりました。
この1ヶ月、相場で何が起きたか
ここからは、この1ヶ月の相場を振り返ります。今月の主役は、間違いなく半導体の暴落です。そして、その引き金は米国ではなく中国から来ました。
発端は、中国のメモリ半導体大手CXMT(長鑫存儲)の上場です。 7月下旬、CXMTが上海市場に上場し、約86億ドルを調達する今年のアジア最大のIPOとなりました。株価は初日に+466%という考えられない上がり方をして、中国本土市場で最大級の時価総額の会社になりました。
これがなぜ米国の半導体株の暴落につながるのか。市場がこの1年買い続けてきた「メモリ・スーパーサイクル」——AI向けの高性能メモリ(HBMなど)の需要が強すぎて、メモリの価格支配力が何年も続くというストーリー——の前提が、揺らいだからです。中国が国を挙げて安いメモリを大量供給できるようになれば、SK hynixやMicron、Samsungが握ってきた価格決定力は削られるかもしれない。この競争不安から、7月27〜28日にかけてSK hynixが-14%、Samsungが-13%、SanDiskが-12%と、メモリ関連が軒並み急落。半導体セクター全体では、6月末からの下落で時価総額およそ1.5兆ドルが消え、主要銘柄の多くが高値から20%超の下落=ベアマーケット入りと報じられました。
そこに、もうひとつの不安が重なりました。AIインフラ投資は本当に回収できるのかという、6月から燻り続けている問いです。巨大テック企業が借金をしてまでデータセンターに巨額を投じ続けることへの警戒に加え、NvidiaがOpenAIに対して最大2,500億ドル規模の支援策を協議している、という報道も出ました。支援と聞けば聞こえはいいですが、「AIの現場はそこまで資金繰りが苦しいのか?」と読むこともできる。買い支えてきたストーリーの足元を、市場全体が疑い始めた月でした。
中東と金利にも触れておきます。 6月に署名された米国とイランの停戦覚書のあとも、中東は落ち着きませんでした。イエメンの武装組織による紅海での船舶攻撃と米国の報復示唆で緊張が再燃し、原油は一時100ドル台へ急騰。インフレ再燃の警戒から米国の超長期債(20年・30年)の利回りは5%台まで上がりました。私のAGG(米国総合債券)が小幅に下げたのは、この金利上昇が背景です。それでもAGGの「比率」が21.6%→23.4%へ上がったのは、AGG自身が強かったのではなく、SOXLが激しく沈んだ分、相対的に浮かび上がったからです。
FRBは7月末の会合(FOMC)で金利を据え置きました(3.50〜3.75%のまま)。ウォーシュ議長はインフレ警戒のタカ派姿勢を崩していませんが、すぐの利上げにはやや距離を置いた、という受け止めが多かったようです。
そして為替。 ドル円は中東の緊迫とドル高で7月下旬に一時164円に迫り、約40年ぶりの円安水準と報じられました。ところが判定日の7月31日、円が急伸して一時157円台へ。1日の下げ幅としては2022年以来最大級と報じられ、市場では為替介入の観測が広がりました(執筆時点で、政府・日銀からの正式な発表は確認していません)。164円目前から157円台まで、1週間ほどで7円動く為替は、ドル建て資産を円で眺める身としてはかなりの迫力です。ただ、私のリバランス判定はすべてドル建ての比率で行うので、為替が何円だろうと判定には1ミリも影響しません。こういう日に「判定は比率だけ」と決めてあるありがたみが染みます。
最後に、判定前日の木曜(7月30日)のどんでん返し。 実は水曜までの下落が続いていれば、SOXLの乖離は-10%を超えて、リバランス発動だった可能性が高いのです。ところが木曜、FOMC通過とMicrosoft・Meta・Amazonの好決算を受けて市場が大反発。ナスダックは+2.8%と6日続落を止め、売り込まれていた半導体には押し目買いが入り、半導体指数は約1年3ヶ月ぶりの大きさの反発となりました。この1日でSOXLの乖離は-9.1%まで縮み、判定は「発動せず」に。あと1日ズレていたら、結果は違ったかもしれません。 でも、判定日は毎月最終金曜と決めてあります。都合のいい日を選ばないからこそ、この記録には意味があると思っています。
「SOXLの中身」の話が、現実になってきた
もうひとつ、今月の暴落には個人的に因縁がありました。
7月中旬に、私は「SKハイニクスの米国上場で、SOXLの中身はどう変わるか」という記事を書きました。SOXLが連動する半導体指数は年に1回、9月にだけ銘柄を入れ替える。その判定基準日は7月末で、発表は9月4日——という内容です。
その「判定基準の7月末」の直前、当のSKハイニクスがCXMTショックの直撃を受けて-14%の急落。指数に入るかもしれない候補が、入る前に売り込まれるという皮肉な展開になりました。半導体の勢力図は、AIの追い風だけでなく、中国との競争でも動く。「指数の新陳代謝」を調べたときには半分他人事だった話が、1ヶ月も経たずに自分のポートフォリオを直撃した形です。
9月4日の指数改編の発表で、SOXLの中身が実際にどう変わるのか(変わらないのか)。この答え合わせは、9月の記事で必ずやります。
上の線でも、下の線でも、やることは同じ
5月に「あと0.6%」で動かなかったとき、私は「惜しくても動かない」と書きました。あのときは、SOXLが買われすぎて上の線に迫った月でした。
今月は、売られすぎて下の線に迫った月です。そして、やることは同じでした。±10%に届かなければ、動かない。 上の線に0.6%まで迫っても、下の線に0.9%まで迫っても、線を越えていない以上は何もしません。
正直に書くと、今回は5月よりも心がざわつきました。5月の「もう少しで発動」は、言ってしまえば含み益の整理が1ヶ月先送りになるだけの話です。でも今回は、SOXLが半分になる暴落のさなかで「何もしない」と決め続けることを意味します。「今のうちに逃げるべきでは」「いや、むしろ安いのだから買い増すべきでは」——両方の声が聞こえてくる中で、どちらにも従わない。売られすぎの月の「動かない」は、買われすぎの月よりずっと胆力が要ると知りました。
でも、これもルールの一部です。もしSOXLの下落がもう0.9%深ければ、来月を待たずに発動し、安くなったSOXLを(過剰になったWEBLなどを売って)買い戻していたはずです。線を越えたら、暴落のさなかでも淡々と買う。越えなければ、動かない。私の恐怖心や欲は、どちらの判定にも関与させない——それがこの実験の背骨です。
おまけとして、売買ゼロの月は取引コストも税金もゼロです。先月は利益確定に税金がついてくる話を書きましたが、今月は1円も発生していません。動かない月は、コストの面では最も優秀な月でもあります。
まとめ|「あと0.9%」——今度は下の線だった
・最大乖離はSOXLの-9.1%(10.9%)。発動ラインまであと0.9%でリバランスなし
・5月の「あと0.6%」は買われすぎ側、今月は売られすぎ側。同じ線の反対側だった
・SOXLの価格は1ヶ月でほぼ半分に。6月のリバランス(34.1%→18.5%)が結果的に守りになった——ただしそれは結果論
・引き金は中国メモリ大手CXMTの上場(初日+466%)。競争不安で半導体セクターは時価総額1.5兆ドル消失のベア入り
・中東再緊迫で原油100ドル台・超長期金利5%台。FOMCは据え置き。ドル円は164円→介入観測で一時157円台
・判定前日の木曜に大反発(ナスダック+2.8%)がなければ発動していたかもしれない。それでも判定日は動かさない
・WEBLが27.1%へ膨張して新たな「膨らみすぎ候補」に。来月の主役はこっちかもしれない
発動した翌月に、主役が半分になる。そんな月でも、ルールが「動くな」と言えば動かない。5月と同じ「あと1%未満」の際どさを、今度は反対側の線で経験した1ヶ月でした。
そして来月。今月膨らんだWEBL(+7.1%)が発動ラインまであと2.9%に迫っています。半導体がさらに沈むのか、反発するのか。インターネット株の勢いは続くのか。どこかの銘柄が線を越えれば、4月・6月に続く3回目のリバランスです。越えなければ、また「動かない」を続けます。どちらになるかは、いつも通り、私にも分かりません。
あくまで個人の実験記録なので、生暖かい目で見守っていただけたら嬉しいです。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。


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