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正直に書きます。私は本を読むのが遅いです。
買っても、最後までたどり着かないことのほうが多い。本棚にも、電子書籍のライブラリにも、途中で止まったままの本が並んでいます。
そんな私でも、最後まで読めた投資の本があります。それがこの1冊でした。
『図解・最新 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(山崎元・大橋弘祐/文響社)。開いてみたら、お金の素人と専門家の対話形式で進むわかりやすい本でした。
いまの私は、この本が勧めているのとはずいぶん違うことをやっています。3倍のレバレッジがかかったETFを3本と、債券ETF、それに米ドルの現金。この5つを均等に持って、毎月決まった日に比率を整えるという実験です。この本を読んだ人が見たら、たぶん驚くと思います。
それでも、これから投資を始める人に1冊だけ渡すなら、私はこの本を選びます。
なぜそう言えるのか。8年近く経った今、読み返しながら書きます。
私でも、最後まで読めた本だった
投資を始めたきっかけは、あまり前向きなものではありませんでした。ある事情で、入りたかった保険に入れなかったのです。
「じゃあ、自分でなんとかするしかない」
そう思って投資の本を探しました。でも、どれも分厚いのです。300ページ、400ページ。細かい文字がびっしり並んでいて、専門用語が続いている。読み切れる気がしませんでした。
そんななかで見つけたのが、この本でした。
とにかく、見やすかったのです。判型が大きくて文字にゆとりがあり、専門用語がほとんど出てこない。読んでいるというより、誰かの話を横で聞いている感じに近い。ところどころに図解のページが入って、そこまでの話を整理してくれます。
これなら分かりそうだ。そう思って買いました。
そして——気づいたら、最後のページまで来ていました。「読み切ってやろう」と気合を入れた記憶はありません。読みやすかったから、そのまま読めてしまった。私にとっては、それがまず事件でした。
(あとから知ったのですが、この本は96ページありました。読んでいるときは、ページ数なんて意識していませんでした。)
読み終えたあと、私は証券口座を開いて、投資信託を買いました。この本が言っていたとおりの順番で。
この本が言っていること(私に効いた3つ)
内容を全部は書きません。ここで要約してしまうと読む楽しみがなくなりますし、私がまとめきれるほど簡単な本でもないので。
なので、いまも私の中に残っている3つだけ書きます。
① 人が選ぶより、機械的に選ぶほうがいい
この本は、投資信託を2種類に分けて説明します。プロが銘柄を選ぶタイプと、指標に連動して機械的に買うタイプ。
そして、後者を勧めます。理由は手数料が安いことと、そもそも「どの会社の株が上がるか下がるかを当て続けることは誰にもできない」から。当てられないなら、人が判断する余地をなくしたほうがいい、という理屈です。
図解ページには、こう書かれています。
インデックスファンドは指標に連動して機械的に運用している
この「機械的に」という言葉は、あとでもう一度出てきます。私にとっては、この本で一番残った4文字でした。
② 賭けと投資は、期待値で分かれる
競馬と宝くじの話が出てきます。
競馬は、胴元が集めたお金から2割強を引いて、残りを買った人同士で分け合う。宝くじにいたっては、法律で還元率の上限が決まっていて、実際はもっと低い。この本はそれを「無知の税金」と呼んでいます。
一方で株式には、長い目で見ればプラスの期待リターンがある、と説明されます。
つまり「賭け」と「投資」を分けているのは、金額の大きさでも値動きの荒さでもなく、期待値がプラスかマイナスかだ、ということです。
ちなみにこのくだり、聞き手が「先生は当然ギャンブルやらないんですよね」と聞いて、著者が「やるよ、競馬を」と答えるところで終わります。わかった上で、娯楽としてやる。この線引きの仕方が、私はとても好きです。
③ 大切なのは、見通しをつけること
いくら積み立てれば、何年後にだいたいいくらになるのか。その見通しを持っておくこと。本はそれを繰り返し勧めます。
「だいたいこれくらいになる」というイメージがあれば、漠然とした不安は減る。逆に言えば、見通しが立たないものは怖い、ということでもあります。
――ここは後で、自分に刺さって返ってきます。
本には他にも、個人向け国債の買い方、NISAの手続き、確定拠出年金、住宅、保険といった話が入っています。そちらは、ぜひ本で読んでみてください。
この本の良さは、結論そのものよりそこにたどり着くまでの説明のほうにあると思っています。この記事で私が触れる部分も、答えだけ抜き出せば数行で終わってしまう。その数行に納得できるかどうかは、96ページ分の会話を読んでみないとわからないはずです。
この本で唯一、線を引いてあった1行
電子書籍には、線を引いた箇所を一覧で見られる機能があります。
久しぶりに開いてみて、少し驚きました。この本で私が線を引いていたのは、たった1箇所だけだったのです。
しかも、本の97%地点。ほぼ最終ページでした。
そこに書いてあったのは、お金を3つに分けるという考え方でした。
当面の生活費。絶対に減ってほしくないお金。そして、増えるかもしれないし減るかもしれないお金。この3つに切り分けてから、最後のぶんだけをリスクにさらす。
いま読み返すと、この1行が引かれている位置に意味があったんだと思います。私は最後まで読んで、締めくくりのページで線を引いていた。途中で「なるほど」と思って引いた線ではなかった。
そして、ここがいまの私につながります。
この本が言っているのは「3つに分けろ」という数の話ではありません。リスクを取る前に、守る分を先に切り分けろという順番の話です。
私はいま、投資用の資産を3つの口座に分けています。老後のためのインデックス積立。配当を受け取るための高配当株。そして、レバレッジETFの実験用。この実験に使っているのは、なくなっても生活が壊れないお金だけです。
分け方の中身は本とまったく違います。でも、順番だけは、あの1行のままでした。
「素人が手を出していいハイリスク投資は?」——本には、その章がある
ここからが、この記事を書こうと思った理由です。
読み返していて、目次にこんなコラムを見つけました。
「素人が手を出していいハイリスク、ハイリターンの投資ってありますか?」
聞き手が食い下がる場面です。「安全な運用の話はわかった。でも、少ない金額で大きく増やしたい読者もいるはずだ」と。
著者の答えは、新興国株のインデックスファンドでした。
レバレッジETFではありません。
そして、「それは違う」と言われたものが並びます。潰れかけている会社の株。危なそうな国の通貨。上場廃止が近い株。「安く買って高く売れる」と考えること。理由はどれも同じで、そういうものは当てられないからです。
そのうえで、こう書かれています。
ハイリスク、ハイリターンの運用だってね、賭けじゃないから
本文でも太字になっている一文です。
ただ、この本の本筋はあくまで安全な運用です。このコラム自体、「まあ、いいけど……」という渋い前置きから始まります。ハイリスクを勧める本ではありません。
それでも、質問にはちゃんと答えている。そして答えに、条件をつけました。ハイリスクでも、賭けにはするな、と。
私はこの章を、当時も読んでいたはずです。ただ、どう受け取ったかは覚えていません。いま読むと、自分に向けて書かれているように感じます。
私がやっているのは、この本が勧めた範囲の外側にある
ここは、はっきりさせておきたいところです。
この本は、私がやっていることを勧めてはいません。
さきほどの答えは、新興国株のインデックスファンドでした。私が持っているものは、この本が想定していた範囲の外にあります。
そう思う理由が、3つあります。順に書きます。
①「最悪」の桁が違う
私が線を引いていたあのページには、リスクにさらすお金について、平均すれば年5%くらいのプラスが期待できるが、悪い年には1年で3分の1くらい減ることがある、と書かれています。
私が持っているWEBLという銘柄は、2020年に、97.86ドルから5.02ドルまで下げたことがあります。約95%の下落です(市場データ)。3分の1どころではありません。この銘柄についてはこちらの記事で詳しく書きました。
② 積み立てていない
この本の設計は、毎年こつこつ積み立てて、時間をかけて増やしていくものです。私の実験は追加の入金をしません。足りない銘柄を買うお金は、増えすぎた銘柄を売って作ります。前提がそもそも違います。
③ 見通しが立たない
この本が一番大切だと言った「見通しをつけること」。3倍のレバレッジは、それができない商品です。何年後にいくら、という計算が、そもそも成り立たない。
私がやっているのは、この本が一番大事だと言ったことができない実験なんです。
もうひとつ。この本には、モニターを何枚も並べて画面に張り付く投資家の写真が出てきて、「これは投資ではなくトレーディングで、素人には向かない特殊なゲーム」と説明されます。レバレッジETFは、もともとそのトレーディングのために作られた商品です。
私はそれを、月に1回しか触らないやり方で持っています。ねじれていますよね。そのねじれごと引き受けているのが、このブログの実験です。
なので、この記事を読んで「自分もレバレッジETFを」とは、私からはとても言えません。教科書が「これではない」と書いている場所ですから。自分の記録を残しているだけで、おすすめしているわけではないんです。
この本の教えが生きているのは、実は別の口座のほう
さきほど書いた3つの口座——老後のためのインデックス積立、配当を受け取るための高配当株、そしてレバレッジETFの実験用。(この分け方はプロフィールにも書いています)
本に書いてあったとおりのことをしているのは、最初の口座です。インデックスファンドを積み立てて、見ない、触らない。この本を読んで始めて、いまもそのままです。
レバラボは違います。余裕資金でやっている趣味の実験枠であって、この本の教えを当てはめる場所ではありません。当てはめたら、たぶん怒られます。
ただ、ひとつだけ持ち込んでいるものがあります。教えというより、考え方の癖のほうです。
私が実験で決めているルールは、こうです。各銘柄を20%ずつ持つ。比率が20%から±10%以上ずれたら、翌月の最終金曜に全部を20%へ戻す。それ以外の日は、どれだけ動いても手を出さない。注文は成行だけ。(このルールの詳しい中身は±10%ルールの記事にまとめています)
並べ直すと、全部「自分が判断しないための仕組み」です。
上がりそうだから買う、下がりそうだから売る、をやらない。当てにいかない。
- 著者は「当てられないから、機械的に買う」と言った
- 私は「当てられないから、機械的に戻す」をやっている
やっている商品はまるで違います。でも、当てにいかないという癖だけは、この本から来ています。
あの「機械的に」という4文字は、たぶん一生使います。
この本が「一番大切」と言ったことだけは、私も守っている
読み返していて、一番効いたのはここでした。
本の終わりのほうで、聞き手が最後の質問をします。「お金を運用する上で、一番大切なことを教えてください」と。
著者の答えは、「ちゃんと働くこと」でした。
お金に働かせて自分は悠々自適に、みたいな答えを期待していた聞き手が、拍子抜けする場面です。
そこから、労働も立派な投資だという話が続きます。人がこれから稼ぐ力を「人的資本」と呼び、それを大きくすることこそ安全で効率のいい投資だ、と。自分の能力を高めて、どこでもやっていけるスキルを身につけることは、お金を運用すること以上に大切だとまで書かれています。
そして、こう締められます。
どんな状況になっても働く術を持っていることは最強の保険になる
……私がこの本を手に取ったきっかけは、保険に入れなかったことでした。
その最後のページに、「最強の保険」という言葉があった。読んだ当時は、たぶん読み流していたと思います。
私がレバレッジETFという荒っぽいものを持っていられるのは、腕がいいからでも、度胸があるからでもありません。ほかの2つの口座と、働いて得ている収入があるからです。この実験に使っているお金が全部なくなっても、生活は続く。その前提があるから、毎月淡々と比率を戻していられる。
商品選びでは、私はこの本から一番遠いところにいます。でも、この本が「一番大切」と言ったことだけは、たぶん守れています。
どの版を読めばいい?
ここは実用の話です。この本、版がいくつもあって紛らわしいので整理します。
| 版 | 発売 | ページ数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 原版 | 2015年 | ― | 最初の版。会話形式 |
| 図解・最新版 | 2017年11月 | 96P | 私が読んだのはこれ。A4の大型・会話に図解を挟む |
| マンガと図解版 | ― | ― | さらに絵の比率が高い |
| 超改訂版 | 2023年12月 | 300P | 新NISA対応。いちばん新しい |
これから読む人には、超改訂版を勧めます。
理由ははっきりしています。私が読んだ図解版は、2017年のまま改訂されていないので、2024年から始まった新しいNISAに対応していません。制度の部分は、いま読むと古いのです。内容そのものは色褪せていませんが、そこだけは注意が必要です。
一方で、「分厚い本が無理」という人には、いまでも図解版という選択肢があります。96ページで、判型が大きく、会話で進みます。分厚い本を何冊も前にして諦めてきた私でも、これは最後まで読めました。制度の最新情報は、あとから証券会社のサイトでも追えます。
ちなみに図解版はA4サイズでかなり大きいので、本棚に入らないという声もあります。私は電子書籍で読みました。
向いている人:投資の本を最後まで読めたことがない人/専門用語で止まってしまう人/何から始めればいいか決めてほしい人
向いていない人:すでにインデックス投資をしている人/個別株の分析手法を知りたい人/制度の最新情報だけが欲しい人(それは公式サイトのほうが早いです)
最後に、著者のこと
この本を読んだあと、私はテレビやYouTubeで山崎元さんを何度も見かけるようになりました。本のなかで会話を聞いていた相手が画面で喋っているので、勝手に知り合いのような気持ちになっていたと思います。
だから、がんになったと知ったときは驚きました。治ってほしい、と素直に思いました。
そして、闘病しながらYouTubeに出続けている姿を見ました。あれには、感銘を受けました。
そのうえで、山崎さんはがんになったあとも「がん保険はいらない」と言い続けました。自分にかかった治療費を公開して、健康保険と高額療養費制度でどこまでカバーされるのかを示したうえで、です(トウシル/プレジデントオンライン)。
私が読んだ本の表紙には、「『がん保険』には絶対入るな!」と大きく書いてあります。自分の身にそれが起きても、書いたことを引き受けた方だったんだと思います。
山崎元さんは、2024年1月1日に亡くなりました。65歳でした。
新NISAに対応した超改訂版が出たのが、2023年12月7日。その25日後のことです。
私はこの本で投資を始めて、ずいぶん経ちました。
いまも、比率を戻す日の朝に「当てにいかない」と自分に言い聞かせています。そこにあるのは、この本から受け取った考え方です。
あの1冊がなければ、私はここにいません。
本記事は個人の投資実績・体験を共有するものであり、特定の金融商品の購入を推奨・勧誘するものではありません。
レバレッジETF(WEBL・TECL・SOXL等)は値動きが大きく、元本割れのリスクが非常に高い金融商品です。長期保有による減価リスクもあります。
投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて金融機関や専門家にご相談ください。本記事の情報をもとに損失を被られた場合でも、当ブログは一切の責任を負いません。
過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。
生暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。
それではまた、次の記事で。


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