レバラボは、5つの資産を20%ずつ持つ実験です。WEBL、TECL、SOXL、AGG、そして米ドルの現金。
このうち4つはETFです。値段がついていて、毎日動きます。上がった日は嬉しいし、下がった日はそれなりに凹みます。
でも5つ目だけは、違います。
米ドルの現金。1ドルは、明日も1ドルです。
増えません。減りもしません。何も起きません。
その「何も起きない枠」を、私は資産の5分の1も持っています。
正直に言うと、この枠がいちばん説明しにくい枠でした。しかも調べていくうちに、この持ち方にははっきりした反論があることが分かりました。しかもその反論は、私が読んだ限り、筋が通っています。
なので今回は、そこから始めます。
そして、これで5つの資産をすべて解説し終えることになります。
「レバレッジETFと現金を同時に持つのは無駄」——この指摘は、正しい
レバレッジETFと現金を組み合わせて持つことについて、こういう指摘があります。
「それは”現金の両建て”であって、意味がない」
理屈はこうです。
レバレッジETFは、自分が出したお金の3倍のポジションを取る商品です。その3倍分は、どこかから湧いてくるわけではありません。ファンドの中で資金を借りて作られています。
借りている以上、コストがかかります。
一方で現金を持つというのは、お金を使わずに手元に置いておくということです。
つまり——片方でお金を借りて、もう片方でお金を置いている。 コストを払って借りたものを、自分の現金で打ち消しているような状態になります。それなら最初から現金も全部投資に回したほうが、コストの分だけ有利ではないか。そういう指摘です。
これは、正しいと思います。
コストは実際にあります。私が持っている3本の経費率は、目論見書ではこうなっています。
| ETF | 経費率(年) |
|---|---|
| SOXL | 0.75% |
| TECL | 0.87% |
| WEBL | 0.96% |
しかもこれは運用報酬などの「経費率」であって、3倍を維持するための借入コストは、これとは別に値動きの中に入ってきます。
だから私は、この指摘に反論しません。私はコストを払っています。 それは事実です。
問題は、その先です。
払っているなら、何を買っているのか。
それでも20%を現金にしている理由
答えを先に書きます。
レバラボでは、現金は「待機しているお金」ではなく、「5つのうちの1枠」だからです。
ここが、たぶんいちばん誤解されやすいところです。
「レバレッジETF+現金」と聞くと、ふつうは暴落を待って構えている資金を想像すると思います。相場が崩れたら買い向かうための待機資金、というイメージです。
レバラボの現金は、それではありません。
レバラボのルールは単純で、毎月最終金曜日に、5つの資産の比率を見て、20%から±10%以上ずれているものがあれば全体を20%ずつに戻す——それだけです。判定日以外は、何が起きても動きません。詳しい判定のしかたは±10%ルールの記事に書きました。
そして、この実験には大事な前提がもう一つあります。追加のお金を入れないことです。
新しい入金がないということは、何かを買うお金は、何かを売ることでしか作れないということです。
ここで現金の役割が出てきます。
米ドルの現金は、5つの資産の中で唯一、自分では動かない枠です。他の4つが上がれば、現金の比率は自動的に下がります。他の4つが下がれば、現金の比率は自動的に上がります。
つまり現金は、他の4つの動きをそのまま比率として映す鏡になっています。
そして20%の線を割ったり超えたりしたとき、翌月の最終金曜の判定で、売る側にも買う側にもなります。何もしない資産が、比率のズレを作り、そのズレが判定を動かす。
もし5つ全部が値動きする資産だったら、全部が同じ方向に動いた月には比率がほとんどずれません。ずれなければ、判定も働きません。動かない枠があることで、実験の物差しが安定する——私はそう理解しています。
ここは、以前に書いたUSD現金20%が「次の弾」になった話と、少し角度が違います。あちらは「2026年5月に、上がっている資産を売らずにいられた」という、ある月の気持ちの記録でした。今回は、器そのものの話です。
MMFかAGGか、迷った末に「同じETF」に揃えた
この5資産の形を決めるとき、私は迷ったことがあります。
守りの枠を、外貨建てMMFにするか、AGGにするか。
外貨建てMMFは、預けた米ドルが運用されて利回りがつくタイプの商品です。証券会社の説明ページには、こんな特徴が挙がっています。
- 元本の保証はない
- 解約に手数料はかからず、いつでも解約できる
- 管理報酬や監査費用などのコストがかかる
ただ口座に置いてあるだけの米ドルには、こういう利回りはつきません。普通に考えれば、増えるほうがいいはずです。
それでも私はAGGを選びました。理由は、地味です。
他の保有と同じ「ETF」という器に揃えたかったからです。
WEBL、TECL、SOXL、AGG——全部ETFなら、見るところも、売り買いのしかたも、記録のつけかたも同じです。そこにMMFが混ざると、扱いの違う商品を一つだけ抱えることになります。AGGそのものの役割はAGG徹底解説の記事に書きました。
そして、実験を始めるときに手元にあった外貨建てMMFも、2026年4月13日に売却してドルにまとめました。理由は同じで、管理が煩雑になると思ったからです。
投資として深い意味があったわけではありません。この実験を毎月続けていくうえで、シンプルなほうがいいと考えた。それだけです。
正直に書くと、これは結果として利息を手放す選択でもありました。増えたはずのものを増やさなかったのは事実です。
ただ、あとから振り返ると、この地味な判断はレバラボの他のルールと同じ形をしていました。
- 5つの資産を20%ずつ(配分を考えなくていい)
- 判定は月に1回、最終金曜だけ(毎日相場を見なくていい)
- 追加のお金を入れない(家計と切り離せる)
全部、続けられる形にするための設計です。利回りを最大にするための設計ではありません。
さっきの「両建てだから無駄」という指摘に、ここで一つだけ返せることがあるとすれば、これだと思います。レバラボの現金は、効率を追って残ったものではなく、10年続けるために選んだ形です。 それが正解かどうかは、まだ分かりません。
値動きしないはずの器が、円で見ると動いた
ここまで「米ドルの現金は動かない」と書いてきました。
これは半分だけ本当です。
ドルの世界では、1ドルは1ドルのままです。でも私は日本にいて、円で暮らしています。円で見ると、この枠は動きます。
2026年の夏に、それがはっきり出ました。
7月、ドル円は164円に迫るところまで円安が進みました。そして7月30日、日本が米国市場で円買いの為替介入に踏み切ります。翌7月31日には、米国財務省と足並みをそろえた協調介入が実施されました。
このことは、8月3日の財務大臣談話で正式に発表されています。談話には、米東部時間7月31日に米財務省と協調して円買い介入を実施したこと、そして今後さらなる協調介入も躊躇しないことが書かれています。
ドル円は、164円手前から157円台まで一気に振れました。数日のうちに、8月3日には155円台をつけています。 5月上旬以来の円高水準でした。
規模も相当なものでした。財務省が公表している数字では、2026年7月30日から8月26日までの為替介入の総額は15兆3,993億円です。
この間、私は何もしていません。
判定日ではなかったので、買いも売りもしていません。ドルを円に換えてもいません。それでも、私の持っている米ドル現金の「円で見た価値」は、5%以上目減りしました。
値動きゼロの資産のはずなのに、です。
これが、この枠の二つ目の顔だと思っています。価格変動はない。でも為替変動はある。 「安全資産」と呼ぶには、ここを飛ばせません。
ちなみにドル円はその後、8月28日に160円台を回復しています。日米が足並みをそろえてまで止めた水準に、1ヶ月で戻ってきたことになります。この経緯は8月のリバランス記録に書きました。
介入があったから円高になる、とも限らない。 1ヶ月の値動きで結論を出すには早すぎる、というのが今の私の見方です。
税金を払うのは、この器だけ
もう一つ、この枠にしかない役割があります。
税金の支払い口になっていることです。
米国株やETFを売って利益が出ると、税金がかかります。私の口座は特定口座(源泉徴収あり)なので、自分で計算して納める手間はありません。自動的に引かれます。
問題は、どこから引かれるかです。
証券会社の説明によると、譲渡益税は円で計算されて、まず円の預り金から徴収されます。 そして円が足りない場合は、税額に相当する米ドルを売って、円に充てるという処理が入ります。この米ドルの売却は、税額が確定した日の早朝に行われるとされています。
レバラボは米ドルで運用している実験なので、円の余力は基本的にありません。ということは——利益が出るたびに、米ドルの現金から税金が引かれていくということです。
これが実際に効きました。
2026年6月のリバランスで、私は利益の乗っていた資産を売りました。売った直後、5つの資産はほぼ20%ずつに戻っています(1株単位でしか売り買いできないので、ぴったり20%にはなりません)。
でもそのあと、税金が引かれました。
| 時点 | 米ドル現金の比率 |
|---|---|
| 6月のリバランス直後 | 19.8% |
| 税金が引かれたあと | 17.3% |
ほぼ20%に戻したはずの枠が、ひとりだけ17.3%まで痩せていました。他の4つは何も減っていません。利益を確定したコストを、この枠だけが負担した格好です。
はじめてこれが起きたときは、正直、少し驚きました。今は「そういうものだ」と思っています。利益が出た証拠でもあるので、しょうがないかなと。
税金そのものの仕組みは米国ETFの税金の記事に詳しく書いたので、ここでは深追いしません。
なお8月のリバランスでも同じことが起きています。リバランス直後の米ドル現金は21.0%でしたが、税金が引かれたあとはおおむね20%前後に落ち着く見込みです。6月ほど痩せなかったのは、売った資産の利益がそのぶん小さかったからです。
で、実際どうだったのか
ここまで「コストは払っている」「増えない」「為替で動く」「税金で痩せる」と、あまり良いことを書いていません。
では、この形にして意味はあったのか。
レバラボでは毎月、「もし初回のまま一度も売り買いせず放置していたら、いまどうなっていたか」という理論値を並べて記録しています。月に1回リバランスすることに意味があるのかを測るための、対照実験のようなものです。
2026年4月を100として、8月時点の数字がこうなりました。
| 指数(2026年4月=100) | |
|---|---|
| レバラボ(毎月リバランス) | 121.89 |
| 放置していた場合 | 111.49 |
差は10.40ポイント。7月時点では5.80ポイントだったので、2ヶ月続けて開いています。
ここまで書いておいて何ですが、この数字で「リバランスは正しい」と結論づけるつもりはありません。
- これは上げ相場での結果です。膨らんだものを削ってきた分が効いた局面であって、下げ相場でどうなるかはまだ一度も試していません
- 放置版は概算です。分配金の扱いなどで、1.5%程度の誤差が乗ります
- まだ5ヶ月です。相場が一周するには短すぎます
私が今言えるのは、「上げ相場では、こう出た」というところまでです。答え合わせは、これから何年もかけてやることだと思っています。
米ドル現金の比率も、実験開始からこう動いてきました。リバランスをした月の、リバランス直後の数字です。
| 米ドル現金の比率 | |
|---|---|
| 2026年4月(初回) | 16.4% |
| 2026年6月 | 19.8%(税引き後 17.3%) |
| 2026年8月 | 21.0%(税引き後の想定 約20%) |
最初は端数の関係で20%に届かず、いまはようやく20%前後で回るようになりました。この枠が20%で安定してきたこと自体が、実験が形になってきた証拠かなと思っています。
まとめ|5つの資産を、ぜんぶ解説し終えて
米ドル現金という枠について、分かったことを並べます。
- 「レバレッジETFと現金の同時保有は無駄」という指摘は正しい。コストは実際に払っている
- それでも持っているのは、現金が”待機資金”ではなく”5つのうちの1枠”だから。動かない枠があることで、他の4つのズレが比率に出る
- 外貨建てMMFではなくAGGを選び、MMFも売ってドルにまとめた。理由は利回りではなく、続けやすさ
- 値動きはゼロでも、為替では動く。2026年7月末の協調介入で、円で見た価値は数日で5%以上動いた
- 税金を負担するのはこの枠だけ。6月はほぼ20%に戻したはずが17.3%まで痩せた
- 毎月リバランスした場合と放置した場合の差は、8月時点で10.40ポイント。ただし上げ相場だけの結果
これで、WEBL・TECL・SOXL・AGG・米ドル現金——5つ全部を解説し終えました。
書き始めたときは、正直、現金の回がいちばん薄くなると思っていました。中身の銘柄もないし、分配金も出ないし、書くことがない枠だと思っていたからです。
実際は逆でした。この枠がいちばん、レバラボの設計思想が出ている枠でした。
増えないものを5分の1も持つ。利息のつく商品をやめて、ただのドルにする。効率で考えたら、どちらも選ばない道です。でもそれは、10年20年と続けるために選んだ形でした。
正しいかどうかは、まだ分かりません。 それを確かめるためにこの記録を続けています。
あくまで個人の実験記録なので、生暖かい目で見守っていただけたら嬉しいです。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
本記事は個人の投資実績・体験を共有するものであり、特定の金融商品の購入を推奨・勧誘するものではありません。
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