レバラボの5資産のうち、いちばん付き合いが長いのがTECL(テクノロジー株3倍ETF)です。2020年の夏、値動きを見るつもりで1株だけ買ったのが、この実験のいちばん最初の一歩でした。
その6年のあいだに、TECLの中身は、私が思っていたものと変わっていました。
「TECLといえばAppleとMicrosoft」——ネットで調べると、いまでもそう書かれています。私も長いことそう思っていました。ところが最新の構成を見ると、筆頭はNVIDIA。AppleもMicrosoftも、その後ろにいます。
この記事では、TECLとは何なのかを最新のデータで整理します。仕組み・構成銘柄・リスク・分配金・NISAの扱い、そして「TECLとSOXLは何が違うのか」——調べていて私自身がいちばん驚いた事実まで、6年分の実体験と一緒に書きます。
TECLとは?テック株指数の「3倍」を“1日だけ”狙うETF
TECLは、米国の運用会社Direxion(ディレクション)が出している、米国テクノロジー株指数の1日の値動きの3倍を目指すレバレッジETFです。連動するのは「S&P Technology Select Sector Index」——S&P500のテクノロジーセクターだけを取り出した指数で、ETFでいえばXLKが同じ指数に連動しています。
ざっくり言えば、「XLKの1日の値動きを3倍にした商品」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ティッカー | TECL(NYSE Arca上場) |
| 運用会社 | Direxion(ディレクション) |
| 連動指数 | S&P Technology Select Sector Index(XLKと同じ)の日次3倍 |
| 設定 | 2008年12月17日 |
| 経費率 | 年0.87%(2026年8月時点) |
| 純資産 | 約61億ドル |
ここで大事なのは、SOXLの解説でも書いたのと同じ話——「3倍」は「1日(デイリー)」の値動きに対する3倍だということです。長期で3倍になる商品ではありません。この設計上、上下を繰り返す相場では、指数が元に戻ってもTECLだけ戻りきらずに削れていく“減価”が起こります。仕組みは数字の例を使ってSOXLの記事に詳しく書いたので、初めての方はそちらもどうぞ。
ひとつ豆知識を。TECLの設定は2008年12月で、SOXL(2010年)よりもWEBL(2019年)よりも古い、Direxion 3倍シリーズの「長兄」です。リーマンショックの直後に生まれたことになります。
構成銘柄の中身は、もう「AppleとMicrosoft」ではない
TECLを調べると、「Apple と Microsoft の2社だけで40%超」という説明によく出会います。これは、もう最新の姿ではありません。
TECLが連動する指数(XLKと同じ)の最新の顔ぶれは、こうです。
| 順位 | 銘柄 | 比率 | 分野 |
|---|---|---|---|
| 1 | NVIDIA | 14.46% | 半導体(AIの主役) |
| 2 | Apple | 12.26% | ハードウェア |
| 3 | Microsoft | 9.90% | ソフトウェア・クラウド |
| 4 | Broadcom | 5.40% | 半導体 |
| 5 | AMD | 4.00% | 半導体 |
| 6 | Micron | 3.63% | 半導体(メモリ) |
| 7 | Intel | 3.12% | 半導体 |
| 8 | Cisco | 3.12% | ネットワーク機器 |
| 9 | Applied Materials | 2.78% | 半導体製造装置 |
| 10 | Palantir | 2.57% | データ解析ソフト |
※指数の構成比。2026年8月上旬時点。指数全体では約76銘柄。
筆頭はNVIDIAです。AIブームでNVIDIAの時価総額が跳ね上がった結果、時価総額の大きさで比率が決まるこの指数では、順位がすっかり入れ替わりました。
そして、黄色く塗った行を見てください。上位10銘柄のうち6銘柄が半導体関連で、その合計は3割を超えます。
私が2020年に「AppleとMicrosoftが上位だから」と思って買ったTECLは、6年のあいだに、かなり違う顔になっていたわけです。ETFの中身は、買った時のまま止まってはいない。 これは当たり前のようで、持ち続けていると案外忘れてしまう事実でした。
TECLとSOXLは何が違う?——実は「3割が同じ顔」だった
ここが、今回いちばん書きたかったところです。
「TECLとSOXL、どっちを持てばいいの?」——検索でもよく調べられている疑問です。テクノロジー3倍と半導体3倍。名前も値動きの荒さも似ていて、違いが分かりにくい。
一般的な説明はこうです。
- TECL=テクノロジーセクター全体(ソフトもハードも半導体も)の3倍
- SOXL=半導体に特化した指数の3倍
これは正しいのですが、実際に中身を並べてみると、もっと踏み込んだ事実が見えます。TECLの上位には、SOXLの主役たちがそのまま入っているのです。NVIDIA、Broadcom、AMD、Micron、Intel、Applied Materials——さきほど黄色く塗った銘柄は、そっくりSOXLの顔ぶれでもあります。
つまり、「TECLとSOXLは別のもの」ではなく、「TECLの3割ほどはSOXLと同じもの」。両方を持つと、半導体への賭けが二重に乗ることになります。
これは私自身のポートフォリオの話でもあります。レバラボは5資産均等——TECLもSOXLもそれぞれ20%が目標です。ということは、私は知らないうちに、半導体にかなり厚く賭けていたことになります。5資産に分散しているつもりで、実は中身が重なっていた。
正直に言うと、この重なりに気づいたのは、この記事を書くために構成銘柄を並べた時でした。6年持っていて、今さらです。
じゃあ組み替えるのかというと、いまのところ変えません。理由は2つあります。ひとつは、レバラボが検証したいのは「5資産均等・月イチ・±10%」というルール自体の挙動であって、途中で配分を変えると実験になりません。もうひとつは、この重なりがリバランスの動き方に現れるからです——半導体が上がればTECLとSOXLの両方が膨らみ、下がれば両方が縮む。同じ方向に動きやすいぶん、±10%の判定にも一緒に引っかかりやすい。実際、直近のリバランスでも、TECLとSOXLは同じ側で動いています。
「分散しているつもりが重なっていた」。これは私の失敗談ですが、ETFを複数持つ人にはわりと起きることだと思います。名前ではなく中身を見ないと分からない。この記事を書いた収穫は、私にとってはここでした。
なお、レバラボのもう1本の3倍ETF・WEBL(インターネット株3倍)とは、また関係が違います。WEBLの上位はAmazon・Alphabet・Meta——テック企業ですが、AppleとMicrosoftは「インターネット売上が半分未満」という基準で入っていません。TECLとWEBLは、むしろ補い合う関係です。
3倍の代償——上がる時も下がる時も3倍
ここまで中身の話をしてきましたが、リスクの話も正直に書きます。
TECLは3倍レバレッジETFです。上がる時は3倍、下がる時も3倍。テクノロジー株が下げた局面では、TECLはその何倍もの勢いで沈みます。
数字で見ましょう。金利上昇でハイテク株が売られた2022年、TECLは1年で約67%下落しました(2021年末の86ドル台 → 2022年末の28ドル台)。さらに高値と安値で見れば、2021年の91ドル台から2022年の18ドル台へ——およそ8割の下落です。
いま(2026年8月)のTECLは200ドル台で取引されています。あの安値から10倍以上に戻った計算になりますが、いま見えているのは「戻った」あとの景色だけだという点は、忘れないほうがいいと思っています。当時、この先どうなるかを知っている人は誰もいませんでした。
さらに、冒頭で触れた減価があります。上下を繰り返す相場では、指数が元の水準に戻っても、TECLは戻りきりません。長く持つほどこの影響を受けるので、Direxion自身もこの手の商品を「洗練された投資家向け」と位置づけています。「初心者が安心して長期で積み立てる商品」ではない、という運用会社からのメッセージです。
そしてもうひとつ、TECL特有の注意点があります。構成が半導体に寄った結果、TECLの値動きは以前より荒くなっている可能性がある、ということです。半導体はテクノロジーの中でも特に振れ幅の大きい分野。その比率が3割を超えているということは、指数そのものが以前より半導体の気分に左右されやすくなっているわけです。「テック全体に分散した3倍」というイメージより、実態は尖っている。ここは持つ前に知っておいたほうがいいと思います。
年末に、突然くる巨額の分配金
TECLには、他の3倍ETFにない特徴があります。分配金です。
WEBLもSOXLも分配金はごくわずかで、「配当を取る商品ではない」と私は書いてきました。ところがTECLは四半期ごとに分配があり、しかも年末に、時々とんでもない額が出ます。
2025年12月がまさにそれでした。1株あたり$8.03759——株価の数%に相当する額が、短期キャピタルゲイン分配として支払われました(権利日2025年12月10日)。
これは「儲かった」話ではありません。仕組みとしては、ファンドの中で出た売買益を投資家に配るもので、そのぶん株価は下がります(分配落ち)。そして課税されます。私の口座の記録では、この分配にかかった税金は日本の20.315%のみでした——米国側では課税されていなかったのですが、その理由は税金の記事で詳しく解剖したので、興味があればそちらへ。
注意しておきたいのは、この分配は毎年必ず出るとは限らないということです。ファンド内部の売買状況しだいなので、額も有無も年によって変わります。「TECLは利回り◯%」という数字を見かけたら、それが年末の巨額分配で押し上げられた一時的な数字ではないか、確かめたほうがいいと思います。
TECLは新NISAでは買えない
WEBLやSOXLと同じく、TECLのようなレバレッジ型ETFは新NISAの成長投資枠の対象外です。制度上、レバレッジ型・インバース型は除外されています。
つまりTECLは、特定口座などの課税口座で持つ商品。売却益にも、さきほどの年末分配にも、普通に税金がかかります。長期の非課税運用を前提とした器には、そもそも入れられない——制度を作る側も「これは長期でじっくり持つ商品ではない」と判定しているわけです。
私とTECLの6年——最初の1株から、初めて売った日まで
ここからは、私自身の話です。
2020年の夏。レバレッジETFという言葉を知ったばかりだった私は、値動きを見るつもりで、恐る恐る1株だけ買いました。これがレバラボの、いちばん最初の一歩です。当時の上位銘柄はAppleとMicrosoft。「この2社が伸びないわけがない」——そんな単純な理由でした。
しばらくして、2021年3月にTECLは10対1の株式分割をします。1株が10株になり、価格は10分の1に。持っている価値は変わらないと頭では分かっていたのに、「安くなった」ように見えて、私は嬉しくなってしまいました。買いやすくなったと感じて、そこから買い増しのペースが上がっていきます。同じ時期にSOXLも15対1の分割をして、そちらにも手を出しました。いま振り返れば、分割は価値を変えないという理屈を知っていてもなお、心は動くという、いい教訓です。
そこから数年、私がやっていたのは「買う」ことだけでした。当時の自分ルールは、毎月末に、3本のレバレッジETF(WEBL・TECL・SOXL)のうち一番値下がりしているものを買い増すというもの。TECLはその中の1本で、順番が回ってきた月に買っていました。
問題は別のところにありました。買うルールはあるのに、売るルールがない。 上がれば嬉しい、下がれば「いつか戻る」と握りしめる。利益を確定する基準が、私の中にずっと無かったのです。
変わったのは2026年4月です。5資産を各20%に揃え、月に一度、±10%以上ズレた月だけ戻す——±10%ルールを導入しました。そして6月末のリバランスで、私は初めて、自分の意思でTECLの一部を手放しました。
気分で売ったのではありません。ルールが「膨らみすぎだ、減らせ」と言ったから売った。6年間ずっと買うだけだった銘柄を、ルールに従って減らす。あっけないくらい静かな作業でしたが、私にとっては小さくない一歩でした。
私はTECLをこう位置づけている
TECLは、レバラボでいちばん付き合いの長い銘柄です。最初の1株を買った日から数えて6年。その間に、中身の主役はAppleからNVIDIAへ移り、10対1の分割があり、暴落があり、そして今年、初めて売る規律が加わりました。
でも、いまの私にとってTECLは特別枠ではありません。5資産のうちの1枠(目標20%)です。膨らめば売るし、縮めば買う。それだけです。
ひとつだけ、この記事を書いて変わったことがあります。TECLとSOXLの中身が3割ほど重なっていると知ったこと。私のポートフォリオは、思っていたよりも半導体に賭けていました。だからといって配分をいじることはしません——それを含めて、このルールがどう転ぶのかを見るのが、この実験だからです。ただ、自分が何に賭けているのかを正確に知っておくことは、続けるうえで大事だと思っています。
何をどれだけ持つかは、一人ひとりの目的とリスク許容度で変わります。私のやり方はお手本ではなく、あくまで一人の実験記録です。
まとめ|3行でTECL
・米国テクノロジー株指数(XLKと同じ指数・約76銘柄)の「1日の値動き」を3倍にするレバレッジETF(運用:Direxion/経費率 年0.87%)
・中身の主役はもうAppleではなくNVIDIA。上位10のうち6銘柄が半導体関連で合計3割超=SOXLと中身が重なる
・年末に巨額の分配が出ることがあり(2025年12月は1株$8.03759)、新NISA成長投資枠は対象外。私は5資産の1枠として±10%ルールで淡々と扱っている
「TECLの構成銘柄は?」と検索した人が知りたかったのは、たぶん「これは何に賭ける商品なのか」だと思います。私の答えは——いまのTECLは、テック全体というより、AIと半導体に大きく賭ける商品になっている、です。それが良いか悪いかではなく、事実としてそうなっている。そして中身は、これからも入れ替わっていきます。
次のリバランス判定は今月末の最終金曜。TECLがどちら側に動くのか、また淡々と記録します。
あくまで個人の実験記録なので、生暖かい目で見守っていただけたら嬉しいです。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
本記事は個人の投資実績・体験を共有するものであり、特定の金融商品の購入を推奨・勧誘するものではありません。
レバレッジETF(WEBL・TECL・SOXL等)は値動きが大きく、元本割れのリスクが非常に高い金融商品です。長期保有による減価リスクもあります。
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