「SOXLって、いつか償還されたりしないのかな」
持っている人なら、一度は思うことだと思います。私も思いました。3倍のレバレッジがかかったETFを何年も持っている以上、この商品自体が無くなる可能性は、考えないわけにいきません。
SOXLがどういう商品なのかはSOXL徹底解説に書きました。半導体の3倍という仕組みや、大きく下げたときに何が起きるかは調べてあります。でも「その商品自体が無くなったらどうなるのか」は、まったく別の話でした。
それで調べてみたのですが、出てくるのはこういう文章ばかりでした。
純資産が一定水準を下回った場合、繰上償還される可能性があります
可能性があります、で終わってしまう。 実際にどれくらい起きているのか、どういうものが消えたのか、消えるときに何が起きるのか——そこまで書いてあるものが、見つかりませんでした。
なので、実際に消えた商品を自分で調べました。 運用会社がSEC(米国証券取引委員会)に提出した通知が公開されているので、それを1件ずつ開いていく作業です。
分かったことを6つ、順番に書きます。
実際に、何度も消えていた——2010年から少なくとも7回
まず、これが出発点でした。レバレッジETFの償還は、理論上の話ではありませんでした。
私が持っているSOXL・TECL・WEBLと同じ運用会社(Direxion)の商品で、実際に閉じられた記録が並んでいます。
先に断っておくと、この中にはレバレッジのかかっていない商品も混ざっています。 Direxionはレバレッジ商品で知られていますが、それ以外も出しているためです。「レバレッジETFだけが消えている」という話ではありません。
| 通知が出た日 | 取引停止日 | 対象になった商品の例 |
|---|---|---|
| 2010年11月12日 | 2010年11月30日 | 2年国債ブル3倍/ベア3倍 |
| 2011年9月21日 | 2011年10月10日 | 航空(※レバレッジなしの商品) |
| 2012年8月3日 | 2012年9月5日 | 農業、BRIC、素材、ヘルスケア、インド、中南米、小売 |
| 2012年12月14日 | 2013年1月18日 | インサイダー動向、ボラティリティ対応(※レバレッジなしの商品) |
| 2017年9月1日 | 2017年9月25日 | 生活必需品、エネルギー、金融、金鉱、住宅、バイオ、銀鉱、公益 ほか12本 |
| 2020年3月20日 | 2020年3月27日 | 総合債券、欧州金融、先進国、中型株、地銀、天然ガス、ロシア |
| 2020年8月28日 | 2020年9月25日 | 国債ベア、小型株、ポートフォリオプラス、相対ウェイト系 |
「少なくとも」と書いたのは、SECの全文検索に取りこぼしがあると分かったからです。実際、2020年3月の通知は、ある検索条件では出てきませんでした。これが全部だとは言えません。
ただ、少なくともこれだけは起きている。10年ちょっとの間に、7回。
正直に言うと、調べる前は「そんなに無いだろう」と思っていました。思っていたより、ずっと普通に起きていました。
理由はいつも同じだった——値下がりではなく「資産が集まらなかった」
ここが、いちばん意外だったところです。
7件の通知を読むと、閉じる理由がどれも同じでした。原文の言い方は年によって少し違いますが、言っていることは変わりません。
- 2010年:「Due to the Funds’ low levels of assets」(資産が少ないため)
- 2017年:「the Funds’ inability to attract sufficient investment assets」(十分な投資資産を集められなかったため)
- 2020年:「not attracted sufficient investment assets to be economically viable」(経済的に成り立つだけの資産を集められなかったため)
「値下がりしたから閉じる」と書かれた通知は、1件もありませんでした。
私はずっと、勘違いしていました。価格が下がりすぎると償還されると思っていたんです。実際に書かれていたのは、そうではなく——お金が集まらなかったから、商売として続けられない、でした。
ここで、ひとつ気になったことがあります。「お金」なのか、「買っている人の数」なのか。
通知を読み返しましたが、7件すべてで書かれていたのは「assets(資産)」でした。保有している人の数に触れた記述は、1件もありません。
理屈も合います。運用会社の収入は、預かっている資産に対する率で決まるからです。目論見書の費用の表にも「投資額に対する割合」と書かれています。つまり、大勢が少しずつ持っているかどうかより、預かり資産そのものが大きいかどうかが効くことになります。
言われてみれば当たり前で、運用会社にとってETFは商品です。お金が集まらない商品は、畳む。 それだけの話でした。
だからこの枠で見るべき数字は、価格ではなく純資産ということになります。そのETFにどれだけのお金が集まっているか。証券会社の銘柄ページや運用会社のサイトで公開されているので、誰でも確認できます。
⚠️ ただし、「いくらを下回ったら償還」という基準は公表されていません。 目論見書(485BPOS)を全文検索しましたが、数値の記載はありませんでした。決める権限は取締役会にあると書かれているだけです。閾値は、外からは分かりません。
消えたのは、ベア型とニッチなテーマに偏っていた——12本中11本がベアだった年も
消えた商品の名前を並べていくと、偏りが見えてきました。
2017年に閉じられた12本のうち、11本が「ベア型」でした。 ベア型というのは、相場が下がると値上がりする、逆方向に賭ける商品のことです。生活必需品ベア、エネルギーベア、金融ベア、テクノロジーベア……ブル型(上がると値上がりする側)は、サイバーセキュリティの2倍が1本だけでした。
2012年に閉じられた顔ぶれも、農業、BRIC、インド、中南米、小売。テーマがかなり細かい商品です。
2020年3月の8本も、ロシアベア、天然ガスのブルとベア、地銀ベア、中型株ベア。
そして2020年8月の15本は、そもそも3倍ではなく、低い倍率の商品や、相対的な重み付けをする特殊な商品が中心でした。
さらに、さきほど触れたとおりそもそもレバレッジのかかっていない商品(航空、インサイダー動向、ボラティリティ対応)も閉じられています。
逆に言うと、閉じられていない側があります。 私が持っているような、主力の指数に連動する「ブル3倍」は、この一覧に入っていません。テクノロジーのベアは閉じられましたが、TECL(テクノロジーのブル3倍)は今も動いています。
⚠️ これは「だから私の3本は安全」という話ではありません。 過去に閉じられなかったことは、今後閉じられない保証にはなりません。そう読めてしまうと事実を超えるので、はっきり書いておきます。
言えるのは、消えたものには偏りがあった、それだけです。
ある朝いきなり、ではなかった——ただし7日しかない年もあった
「気づいたら無くなっていた」——これがいちばん怖い形だと思います。
そうはなっていませんでした。
通知が出た日から取引が止まる日まで、どれくらいあったかを並べます。
| 年 | 通知から取引停止まで |
|---|---|
| 2010年 | 18日 |
| 2011年 | 19日 |
| 2012年8月 | 33日 |
| 2012年12月 | 35日 |
| 2017年 | 24日 |
| 2020年3月 | 7日 |
| 2020年8月 | 28日 |
短い年で18日、長い年で35日。 その間に売ることもできます。実際、通知には「保有者は取引停止日までに売却できます」と書かれています。
ただ、1回だけ7日という年があります。2020年3月です。
コロナショックで相場が崩れていた、まさにその最中でした。荒れているときほど、猶予が短い。 これは1件だけの話なので「そういう傾向がある」とまでは言えませんが、いちばん慌てている時期に、いちばん時間がなかったというのは、覚えておこうと思いました。
私の同意を求める場面は、どこにもなかった——決めるのは取締役会
通知を読んでいて、少し意外だったのがここです。
償還を決めるのは取締役会でした。 保有している人に投票や同意を求める手続きは、7件のどれにも出てきませんでした。
流れはいつも同じです。
運用会社(Rafferty)が推奨する → 取締役会が「保有者の最善の利益になる」と判断する → 決定
そして私たちのところに来るのは、目論見書の補遺(Supplement)という形の書類です。「こうなりました」というお知らせで、「どうしますか」ではありません。
日本の投資信託だと、少し事情が違います。証券会社の解説によれば、繰上償還には受益者との協議と金融庁長官の承認が必要で、書面決議は議決権口数の3分の2以上の賛成で決まる、とされています。反対する枠組みが、制度として用意されているわけです。
ただし日本でも例外があって、あらかじめ約款に償還の条件が明確に定めてあれば、「受益者の是非を問わずに」繰上償還できると書かれています。
なので「日本は聞かれる、米国は聞かれない」と単純に言い切ると、それも正確ではありません。違うのは、諮る枠組みが制度として存在するかどうかです。米国籍のETFには、その枠組み自体がありませんでした。
日本の投資信託の感覚で「何かあれば連絡が来て、意思を聞かれるだろう」と思っていると、そこは違った、という話です。
なお、償還されたときに戻ってくるのは現金です。会社が倒産して株券が無価値になるのとは、仕組みが違います。
ただし、ここは誤解しないように書いておきます。戻ってくるのは「清算した時点の価値」です。 そこに至るまでに大きく下げていれば、戻ってくる金額もそれだけ小さくなります。 レバレッジETFはもともと下げ方が急な商品ですし、実際に2020年3月の8本は、相場が崩れている最中に取引を止めています。
「ゼロにはならない」は仕組みの話であって、「損をしない」という意味ではまったくありません。
さらに通知には「未実現の利益や配当を含む可能性がある」とも書かれていました。つまり自分で選んだタイミングではない利益確定が起きるということで、税金の話が絡んできます。この記事では深追いしませんが、米国ETFの税金の記事に仕組みを書きました。
消えるだけではなかった——10本が3倍から2倍になっていた
調べているうちに、償還を探していたら別のものが出てきた、という感じで見つけたのがこれです。
2020年3月、10本のレバレッジETFが、3倍から2倍に変更されていました。
ブラジル、ロシア、エネルギーのブルとベア、金鉱のブルとベア、ジュニア金鉱のブルとベア、石油ガス探査のブルとベア。商品は消えていません。今も動いています。でも、中身の倍率が変わりました。
しかも日程が動いています。
- 2020年3月20日の通知:変更は5月19日から
- 同年3月27日の通知:「recent market volatility and related developments(最近の市場のボラティリティと関連する状況)」により、3月31日の引け後に前倒し
当初の予定から、約7週間も早まりました。
私が持っているWEBL・TECL・SOXLは、この10本のリストに入っていません。3本とも2020年3月の時点で存在していたので(WEBLは2019年11月設定、TECLとSOXLはそれ以前)、対象になり得たけれど、ならなかったということになります。
長く持つことを前提にしている人間にとって、これは償還より気づきにくい変化だと思いました。無くなれば嫌でも気づきますが、倍率が変わっただけなら、ティッカーもそのまま、チャートもつながったままです。持っているものが、いつのまにか違う商品になっている。
ちなみに「中身が変わる」という意味では、もう一つ、連動する指数の銘柄が入れ替わるという話もあります。こちらは年に1回など決まった時期に起きるもので、半導体指数の入れ替えを調べた記事に書きました。
だから私は、こうすると決めた
ここまでが、調べて分かったことです。最後に、自分がどうするかを書いておきます。
レバラボは5つの資産を20%ずつ持って、毎月最終金曜に±10%以上のズレがあれば20%に戻す、というルールで動いています。追加のお金は入れません。
もし5つのうち1つが償還されたら、残った4つを25%ずつにします。
償還されると現金が戻ってきて、それは米ドルの現金の枠に入ります。そのまま次の最終金曜を待って、判定のときに4資産×25%へ整える。それだけです。
代わりのETFは探しません。 ここは自分でもう少し悩むかと思ったのですが、決めてみると単純でした。探し始めると「どれに乗り換えるか」を考えることになります。それは、月イチの判定だけで動くと決めたこのやり方が、いちばん避けたかったことです。
倍率が3倍から2倍に変わった場合は、そのまま持ち続けます。 商品が残っているなら、変わったという事実ごと記録するのが、この実験だと思っているからです。
運用会社が変わった場合も、そのまま持ちます。 調べたところ、ETFの資産は保管機関が分けて管理していて、運用会社が行き詰まってもファンドが道連れになるわけではないようです。実際に運用会社だけが交代してファンドが続いた例もありました。その場合、こちらは何もしなくていいことになります。
決めておいてよかったと思っているのは、ニュースが出てから考えなくて済むことです。±10%ルールを作ったときと同じ理由で、気持ちが動いている最中に決めると、たぶんろくなことになりません。
まとめ
調べる前と後で、いちばん変わったのはここでした。
「値下がりすると償還される」と思っていたけれど、通知に書かれていた理由は全部「資産が集まらなかった」だった。
見るところが違っていた、ということです。価格ではなく、そのETFにどれだけお金が集まっているか。
それから、消えた商品にははっきりした偏りがあったこと。ある朝いきなりではなく18日から35日の猶予があったこと(ただし相場が荒れた年は7日)。決めるのは取締役会で、こちらに出番はないこと。そして消えるだけでなく、倍率が変わるという形もあること。
私が持っている3本が今後どうなるかは、分かりません。 過去に閉じられなかったことは、何の保証にもなりません。分かったのは、起きるとしたらどういう形で起きるのか、それだけです。
でも、それが分かっているのと分かっていないのとでは、たぶん次にニュースを見たときの慌て方が違います。この記録を続けるというのは、そういうことなんだろうと思っています。
あくまで個人の実験記録なので、生暖かい目で見守っていただけたら嬉しいです。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。
本記事は個人の投資実績・体験を共有するものであり、特定の金融商品の購入を推奨・勧誘するものではありません。
レバレッジETF(WEBL・TECL・SOXL等)は値動きが大きく、元本割れのリスクが非常に高い金融商品です。長期保有による減価リスクもあります。
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